みんなで幸せになる方法だけがない。それが問題なのだ。自分だけが自分なりに幸せになる方法はあるけれども、それでは人は満足しない。自分ひとりだけ幸せになることができたとしてもそれは後ろめたいことで堂々と自分は幸せであると宣言することができない。なぜなら一人だけ幸せになったとしても周囲に幸せでない人たちが大勢いるのなら、その人たちは一人だけ幸せになった人を引きずり下ろそうとするはずだからだ。だから自分ひとりだけ幸せになっていることに気付いた人はこっそりとその幸せを享受するだけで自分は今幸せな状態であることを隠しておく。ちょっと不幸そうに見えるように愚痴を言ったりして幸せであることを気づかれないようにさえするだろう。一人だけ幸せであることは危険な状態にいることだ。幸せでない人からいつでも引きずり下ろされる可能性があるから。だから人は自分ひとりだけ幸せである状態にあっても、その状態は後ろめたい気分になるだけで不安を抱いた状態のままになる。その不安は自分の幸せが周りの人たちから妨害されるという危険が常にあるということに由来する。だから不安はなくならない。自分ひとりだけが幸せでも不安が消えることはない。本当に安心できる状態はみんなで幸せなれること。だけれどもみんなで幸せになる方法だけがない。だから不安は消えない。
