共同体の変化

人間が共同体の規範に従うことにこだわるのは、内部の構成員で勝手なことをするものが現れると共同体の生存に関わる問題が生じると考えているから。共同体は結束していなければならない。結束が崩れると共同体の生存の危機が訪れる。

人間は共同体を作って生き延びるという戦略を取るようになったので自分の命を犠牲にして共同体の生存を優先する姿勢が生まれた。共同体を見捨てて一人生き残ったところで共同体なしに生き延びることは難しかったからである。

かつての人間は生まれたところの共同体に自動的に所属することになり、そこから離れることがなかった。自分の所属している共同体の外に別の共同体がありそこの人たちは別の共同体の決まりに従って生きているなんてことを知ることもできなかったので、何も考えることなく身近な決まりに従って生きていた。他の選択肢はなかった。他の共同体があるという知識がなかったので共同体から追い出されたら死ぬしかないと思っていた。だから共同体内のほかの構成員メンバーから嫌われないように生きてきたし、共同体を守るために命をかけることも当然と考えていた。

近代では一般の人でも自分の所属している共同体以外に別の共同体があることを当然のように知っている。そして共同体を出て別の共同体に移ることも自由にできるようになった。さらに資本主義の時代になって各地の共同体が外部に向かって広く構成員を募集するという動きが出てきた。うちの共同体のほうが規範が弱く自由に生きられますよ~うちの共同体は魅力的な福利厚生を設けていますよ~うちの共同体は平等ですよ~だとかいろいろなよい点をPRして、より豊かで強い共同体になるために外部から魅力的な人を集めることで競争をするようになった。共同体競争の時代である。

有能で実力があると思っている人は好きに共同体を選ぶだろう。共同体が衰退したら栄えている共同体を選んで移ることもできるしと考えるだろう。

人間が同じ共同体にずっといるわけではない時代では共同体のために命をかけようという意識はずっと薄れていっているだろう。