人が悩み苦しむのは大それた望みがないから

大抵の人は野心を持たない。望むことは自分が心地よい状態で生きていること。

そのためには漠然と仲間と感じられる人たちに囲まれてこの世界にいてよいと肯定されながら生きていけること。望むことはこのような漠然とした内容だ。しかしこの漠然とした内容の事柄を実現することのほうがはるかに難しい。

具体的な事業を起こしたいとか特定の人物の歓心を買いたいだとか何か研究で業績をあげたいとか関心のあることを追求して実現したいとかいうような目標であれば、その目標に向けて邁進すればいい。どうやったらその目標を実現できるのかを綿密に計算して計画を立てて実行したりすればよい。夢がある、特に具体的な計画を詳細にたてられるようなものを持っている人はよいだろう。しかしたいていの人にはそのようなだいそれた望みはないのだ。なんとなく自分の気持ちがいい状態で生きていければよいというようなふわっとした望みしかない。しかしこの望みをかなえるためには何をしたらよいのか。この望みをかなえるために具体的で詳細な計画書を作ることができない。自分が仲間と感じられる人を探してつきあうようにするためにはどうしたらいいのか。だいたい自分が仲間と感じられるような人物とはどんな人物なのか?考えてもよくわからない。実際に知り合った人を観察してこの人なのか?どうなのかつきあいながら漠然と考えていくしかない。このような具体的な内容に落とし込めないような漠然とした望みしかないことが人を悩み苦しませる原因になる。