自分の欲望

人には自分が強くやりたいと思うことをやれば自分に利益がもたらされるだろうという強固な思い込みがあるようだ。しかし必ずしもそうなるとは限らない。

あんなに強くやりたいと思うからやったのに実行した結果が自分に利益をもたらすことにつながらなかった。そのとき人は強い憤りを感じる。こんなはずじゃなかったのに。

なぜこうなってしまったのか。なぜもたらされた結果が自分の思い通りじゃないのか。その理由を考える。

そもそもそれをやりたいと思った自分の欲望は間違っていた。その欲望は自分の本当の欲望じゃなかったのではないのか。誰かに誘導されてそれが自分の欲望だと思い込まされていたのじゃないのか。人はいろいろな人や物、物語などに影響を受ける。だから自分の欲望が間違っていた理由を自分以外のもののせいにする。あの人の口車に乗せられたのがいけなかったのだ。あの人に騙されたのだ。あるいはあの物語を鵜呑みにしたのがいけなかったのだ。あの物語は悪しき物語だったのだ。などなど。

自分が強く欲望することをすると自分の利益になるだろうという思い込みが最初にあったことに人は気づいていない。ただなぜか強くやりたいと思ったからやったのだと思っている。自分が強くやりたいと思うからやったのだから、その結果がどうであろうと欲望を実行したという事実のみに満足すればいいのにそうはならない。本当に望んでいたのは自分に利益がもたらされることだったから。

利益がもたらされると信じているからやろうとしていることに最初から気づいていれば、それが本当に自分の利益になるかどうかの実現性を考慮して、その行為を実行するかどうかを最初に決めることができるだろう。