人間と共同体の実際

協力しあって共同体を作ることができるのが人間のいいことだと信じられてきたが、人間ははっきりいって共同体を作り維持していくのが得意だとは思えない。共同体を作ることをしたがるのは確かだが、実際に作った共同体の維持を長期間続けるのは難しいのではないのか。

ある程度の人数のいる共同体を作ってだいたい5年くらいしたら、仲たがいしてメンバーの構成員が入れ替わったり、分裂したり他の共同体と離合集散したりしてめまぐるしく共同体内外が変わっていくのが常態だったのではないのだろうか。

分断が問題になっているというが、分断は常に起こるのが当たり前と考えれば問題にならなくなる。

人類の歴史上珍しく国民国家という巨大な構成員のいるすごく大きな共同体を作り維持することがずっと続いてきた現在に我々はたまたま生を受けてしまったので、この状態がずっと続けられるものだと思い込んでいる。これは一時的な歴史上珍しい現象なのではないのだろうか。なぜだいたい同じメンバーである共同体の維持を長期間続けられてきたのか謎だが、たまたま続けられる条件が備わっていたのだろう。今後その条件はどうなっていくか分からない。

またもとのように共同体を作っては壊しを繰り返していく安定していない状態に戻るのかもしれない。

ある本に書いてあったのだが、帝国という大きな共同体ができたわけは、小規模共同体乱立状態だと共同体同士で戦争が頻繁に起こり、安定した生活を営めないからだそうだ。巨大な権力者がいる帝国の中にいれば戦争に煩わされないで比較的安定した生活が送れるという利点があった。ただし帝国のような大きな共同体は中に階層が生じる。下層に位置づけられた者たちはより悪い境遇に甘んじなければならない。戦争が頻繁に起きる小規模共同体乱立状態にいるのがいいのか、下層に甘んじて苦しい暮らしを送るほうがいいのか(でもある程度生存は保障される)は悩ましい選択である。