人が自由に移動できるようになって起こったこと

かつて人は自分の生まれ育った地域を離れずにずっと暮らしていた。移動する手段がなかったからだ。人が自分の生まれ育った地域でずっと暮らす時代、共同体はどうなっていたのかというと、2割ぐらいの運営がうまいタイプの人たちが主導権を握って運営方針を決めて、共同体の運営を回していた。残りの8割ぐらいタイプは基本的に周りの人の行動を真似をするだけの人たちで、主導権を握っているタイプの人たちの敷いたレールの上に沿って行動をするだけだった。それでもどうにか共同体は運営されていった。

人が自由に移動できるようになったときに何が起こったのか。どの共同体にもいた2割ぐらいの運営がうまいタイプの人たちが新天地を求めて出ていってしまったのである。そういったタイプの人たちが集まって、新しい共同体を作った。運営がうまいタイプの人たちで主に構成されている共同体を。そして残された共同体には基本的に人の真似をして誰かの敷かれたレールの上に沿って行動を決めるタイプの人たちだけが残されてしまった。しかしもうレールを敷いてくれる人がいないのである。運営方針を決めることはしたくない人たちだけで共同体の運営をしなければなくなった。それで困っているのではないのかという仮説がある。