敵は自由に選べない

敵を自分の自由意志で選ぶことはできるのだろうか。たいてい、自分がたまたまかかわりをもっていた相手の争いに巻き込まれたりして、自分で選んだわけでもない人たちを相手とする敵・味方の関係ができており、自分でえらんだわけでもない相手と戦う羽目になる。あるいは自分がたまたま所属している共同体がどこであるかによって、敵が自動的に決まってしまう。敵を自主的に選んで戦いに赴くことになるほうが稀なのではないのだろうか。そういうわけだから敵に対する憎しみは特になかった。ただ状況で敵が設定されてしまったので、敵に対する憎しみは後付けで適当に作ったものである。憎しみは後ででっちあげられる。後からでっちあげた適当な感情にも関わらず、一度相手を敵だと思い込めば、本当の憎しみに近い感情を作り上げることができる。

そうしてこの憎しみは後から適当に作ったものにもかかわらず、本当の憎しみなのだと思い込んで、敵との戦いに参加する。